ファサードとは、フランス語に由来し、英語のfaceと同じ語源をもつとされています。建物外観の印象を意味する言葉です。最近、このファサードを単なる外観の印象と捉えるのではなく、建物の外観と機能の両面から考える傾向が見られるようになりました。
ガーデニングもファサードを構成する大切な要素です。造園業者も建築や外構でよく使われるファサードについて知っておく必要があると考え、いろいろ調べたことを報告します。
これから、わが家のリフォームを考えている方、後付けでエクステリアやガーデニングを検討しているお客様の参考になれば幸いです。
ファサードと建物の形状
建物の形状は、ファサードを左右する大切な要素です。屋根と窓、外壁の3つのポイントから見てみましょう。
屋根の外形
屋根の外形で代表的なものをまとめてみました。
- フラット屋根|スタイリッシュで掃除も楽だが断熱性が低くく室内温度が上がりやすい
- 片流れ屋根|高い位置に窓を設置できるので部屋が明るくなるが台風対策が必要
- 切妻屋根|施工コストは低いが妻や破風板の経年劣化には注意が必要
屋根の外形を決めるときは、メリットデメリットをしっかり検討しましょう。
窓について
窓が大きくて数が多い建物は、開放感があり実際よりも大きく見えます。日射しが適度に入れば室内環境も良好になります。窓が少ないとシンプルな印象になりやすいようです。
窓は換気の要ですが、セキュリティーやプライバシーについても十分検討することが重要です。周辺の環境に配慮しながら、外からの侵入がしにくい引き違い窓や小窓、スリット窓などを多用しましょう。
外壁の素材
外壁は建物の大部分を占めるため、その素材感はファサードに大きなインパクトを与えます。一般的な外壁の素材をまとめました。
- モルタル塗り|外壁の表面をコテなどで多彩な仕上がりにすることが可能
- タイル|多種多彩なデザインがありシンプルから重厚なものまで自在に演出できる
- サイディング|金属・木質・窯業系などがありスタイリッシュな印象を与える
外壁材は、導入時のコストだけでなく、耐久性やメンテナンスも考慮して選びましょう。
ファサードと暮らしやすさ
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住宅は生活の基本です。外観の印象だけでなく、快適な環境や安全性、省エネなど暮らしやすさとの両立が重要になります。
ダブルスキンという手法
ファサードを損なわず、室内環境を快適にする建築手法として、今注目されているのがダブルスキンです。
ダブルスキンとは、外壁とガラス、ガラスとガラスとの間に空間をつくることです。この空間で浮力による自然換気を促し、空気・熱・光・音を調節します。
以前は、高層ビルにしか使われていなかった技術ですが、一般住宅にも使われるようになりました。
エネルギーコストの効率化
建物を高断熱や高気密にして電力のロスを極力抑えながら、太陽光パネルなどの発電を組み合わせることが、今後のエネルギーコスト効率化の主流になると考えられています。屋根と一体型の太陽光パネルが広がりを見せているのは、ファサードを考慮してのことでしょう。
また、真夏の日射しはエネルギー消費を増加させますから、南に面した外壁に傾斜をもたせたり上部に庇を設けたりすることで日射しを遮断するなど、建物の形状を考えることも重要です。
防災・耐震で外壁を選ぶ
外壁を選ぶ際に考慮してほしいのが防災や耐震などです。万が一のときに、被害を最小限に抑え、周辺への被害拡大を防ぐことができる外壁材を選ぶことが最重要のポイントになります。
例えば、ALC(軽量気泡コンクリート)は火に強いだけでなく断熱や遮音の効果があり、軽量で木造の構造体にも負担の少ないことから高い評価を得ている外壁材です。
耐震では、建物の外壁面に制振部材と呼ばれるエネルギー吸収材とルーバーやガラスを組み合わせる耐震改修工法が注目されています。
デザインと機能性の両立
デザインと機能性の両立が、ファサードを考えるうえで最も大切なキーワードです。
インテリアというと内装や家具、照明などの室内関連のものというイメージがありますが、現在では玄関やバルコニー、屋外の間接照明なども含んで捉えられるようになっています。
また、人の導線や収納を意識しながら機能性との両立を目指す室内のインテリアと同じように、屋外では建物周りの外構やエクステリアとのバランスも考慮しながら安全性やセキュリティーを考慮しなければなりません。
周辺環境との調和を考えて、軒や塀の高さ、植栽の配置を考える場合もあるでしょう。プライバシーを守るために、玄関や窓に奥行きをもたせたり目隠しフェンスを設置したりすることもあるはずです。
ファサードは、住宅のデザインや機能性を両立させながら、暮らしやすさを追求するために欠かせない考え方の一つなのです。