ガーデニング

宿根草の魅力は「多様性」、植えた場所が「庭」になる。

 

宿根草って何?

 

 

「宿根草」というのを定義すると、

「一年のある期間、休眠し生育を止めて、
季節がくると芽を伸ばして再び生育する草花」

ということになります。

 

似た言葉で「多年草」というのがあります。
多年草は休眠期があっても地上部に茎や葉が残るものをいいます。

 

一年草は文字通り、一年(ワンシーズン)で枯れてしまう草花のことです。

 

ただ、これらの区別は便宜上使われているもので、植物学的なものではありません。
園芸に携わる人たちがつくった慣用語です。

 

宿根草は、とにかく種類が多く、姿形も様々です。奥が深い植物です。

 

ある程度詳しく紹介しようとすると、宿根草だけでひとつのサイトを立ち上げる
必要があります。

 

ここでは、ほんの一部、特徴的なところだけを抜粋して見ていきたいと思います。

 

 

宿根草ガーデンのタイプ

 

一年草は、日当たりのいい花壇やプランターなど、割と単調な環境で育てることを
前提に改良されてきた草花です。そのかわり花束のようにもりもりと咲き誇ります。

 

宿根草はどうでしょうか。

 

日なた、日陰、湿りがちな場所、乾きやすい土地、いろんな環境に合うものを
選ぶことができます。なので、個人のお宅のそれぞれの条件に合う植物を探すこと
ができるのです。

 

草丈、花や葉の色合い、フォルム(形)、テクスチャー(質感)は、
本当に多種多様です。

 

宿根草には、開花期を含め「観賞時季」というのもあります。これらを考慮して
組み合わせることによって、庭を見る人の視線をひきつける、
印象に残る庭をつくることができます。

 

宿根草を使ったガーデンの見せ方には、いくつかパターンがあります。

 

多彩な宿根草のフォルムやテクスチャーを生かして、
異なったタイプを隣にならべて植えるボーダーガーデン風の見せ方。

 

 

風にそよぐ、草丈の高い宿根草をベースに野原の雰囲気を演出する、
コテージガーデン風なもの。

 

 

中高木の樹木を中心に日なたや日陰をつくり、自然をイメージさせる
ナチュラルガーデン

 

 

ただ、これらのガーデンを実際につくるとなると、それなりのスペースや環境が必要ですし、
手をかけてあげる時間や労力が必要になります。

 

なので。ここでは、比較的スペースをとらず、手間ひまもさほどかからない
3つのガーデンを見ていきたいと思います。

 

エントランスガーデン、シェードガーデン、デッドスペースガーデンの3つです。

 

 

エントランスガーデン

 

 

門扉の横や玄関脇のエントランスは、「お出迎えのスペース」です。
いつもきれいにしておきたい場所のはず。
「だけど、手はあまりかけたくない」という方も多いと思います。
そういうお客様にこそ、宿根草を主体にしたエントランスガーデンがおススメです。

 

門扉のような芯になるものがない場合は、シンボルツリーになる背の高いものを
まず、選びましょう。これを落葉樹にした場合は、となりに常緑の低木をもってくると、
落葉後もさびしくありません。

 

あとは環境に合った種類の中から、高さや葉色、フォルムやテクスチャーの違う宿根草を
数種類選んで植栽します。植える種類や数量はスペースの大きさによって変ってきます。
手前から低い順に配置してください。

 

経験上、常緑樹を芯にして、高さや葉色、フォルムの違う宿根草を組み合わせるのが
一番手間いらずです。少しだけ空きスペースをつくって、そこに一年草をシーズンごとに
植替えるようにすれば、一年中見栄えのするエントランスになります。

 

 

シェードガーデン

 

 

シェードとは、光が当たらず暗くなっている、という意味です。

 

一日に数時間しか日のささない場所で育つ一年草はわずかですが、
宿根草なら元気に育つ種類がたくさんあります。
上手に組み合わせれば、日陰ならではのきれいな庭をつくることができます。

 

宿根草は、日陰にも対応できるとはいえ、日がまったくささず、一日中暗い場所で育つ
種類はほとんどありません。でも、一日に数時間は日がさす半日陰や、直射日光は
ささなくても白壁などの反射光が期待できる場所、空がひらけている明るい日陰なら、
育つ宿根草の種類は多く、様々な組み合わせを楽しめます。

 

ポイントはいくつかあります。
明るい葉色や斑入りなど、葉だけで魅せる「リーフプランツ」を利用すること。
背の高めのテラコッタや彫刻など、派手すぎないオブジェを置く。
地面までは日は届いていなくても高い位置に日が当たっているなら、ラティスなどを
設置して、クレマチスなど花の咲くツルものを植える、などです。

 

フォルムとテクスチャーを変えるのが「宿根草ガーデン」の基本ですが、
同じ葉色を一定の間隔で植えてまとまりをだすのも有効な手法です。

 

 

デッドスペースガーデン

 

 

建物やフェンス、花壇の際。生垣や塀の下は、庭として使いにくい場所。
せっかくのスペースが「生かされていない」、デッドスペース。
そういうところこそ、宿根草が大活躍する場所です。

 

これはどのスペースにもいえることですが、特にデッドスペースで大事なのが、
植え込みたい場所の「土」の状態です。
かたく締まりすぎていないか、逆に常に湿っていないか。雨だれなど水の流れの
通り道になっていないか。確認する必要があります。
もしそうなら、土を入れ替えたり、化粧砂利を使ったり、水の通り道をつくったり
環境を整えていきます。

 

そのうえで、土の乾湿の変化に耐え、日照条件にも見合う宿根草を選びます。
横に広がらず高さがでるもの、乾燥に強く少ない土で育つものを選ぶことが
ポイントになります。

 

 

丈夫で使いやすい宿根草のリスト

 

前述の通り、一般に流通しているだけでも宿根草の種類は多く、選ぶのに苦労
するほどです。

 

ここでは、これまで実際に使用してみて、丈夫であまり手間がかからず、
植栽してお客様から高評価をいただいた宿根草の一部を挙げていきます。
参考にしてください。

 

横に広がるタイプ

 


グレコマ(斑入りカキドオシ)
半常緑 日照:日なた~半日陰 土
壌:適湿~湿り気味
耐暑性:強 耐寒性:強 葉の観賞期:春~冬
開花期:春 草丈:10~15cm 株張:200cm以上
丈夫で生長が早く、地を這うように伸びる茎から根を出して、
1年で1mほども伸びます。冬には葉の白斑がピンク色に。
春にラベンダー色の小花をつけます。雑草化しないよう、
適宜、切り戻してください。夏に枯れ上がっても、株元まで
切り戻すと、秋に復活します。

 

 


クローバー
半常緑 日照:日なた~半日陰 土
壌:適湿~湿り気味
耐暑性:普通 耐寒性:強 葉の観賞期:周年
開花期:春~初夏 草丈:10~15cm 株張:30cm以上
グランドカバーの定番のひとつ。春と秋に茎を伸ばし、
増え広がります。花は白またはピンクのボール状。
やや半日陰のほうが夏越ししやすい。暖地では、高温多湿
には弱く、半休眠して葉が枯れることがあるので、
地面すれすれまで切り戻すのがいいようです。

 

 


リシマキア
常緑 日照:日なた~半日陰 土
壌:適湿~湿り気味
耐暑性:強 耐寒性:強 葉の観賞期:周年
開花期:初夏 草丈:5~10cm 株張:40cm~50cm

小さなブロンズ色の葉が地面を這うように密生して広がり
ます。暑さ寒さに強く、極端な乾燥地でなければ、石垣の
上にも広がるほど丈夫で生育が早いのが特徴。葉は周年
鑑賞できるうえ、初夏には星型の黄色い花が株一面に
咲きます。伸びすぎたら適宜刈り込みが必要です。

 

 


フッキソウ
常緑 日照:半日陰~日陰 土
壌:適湿~湿り気味
耐暑性:強 耐寒性:強 葉の観賞期:周年
草丈:10~15cm 株張:20cm

一年中、濃緑色や明るい斑入りの葉を茂らせ、地下茎
でゆっくり増えて、ほとんど手間いらずです。
たいへん丈夫で、ほかの植物が育ちにくい、かなりの
日陰でも耐えて生きます。逆に夏の直射日光の下では
葉色が悪くなり、生育もかんばしくありません。
植物学的には低木ですが、園芸的には宿根草として
扱われています。

 

 


ツルハナシノブ
常緑 日照:半日陰 土
壌:適湿~湿り気味
耐暑性:普通 耐寒性:強 開花期:春
草丈:15~20cm 株張:30cm~40cm
春に咲く花は、ピンクや白、淡いブルー。
初夏にほふく茎を伸ばし、茎の途中から根を出して
広がります。夏に乾く場所にあると弱りやすい性質。
半日陰のナチュラルな雰囲気に合う宿根草。

 

 

こんもり茂るタイプ

 


アルケミラ・モリス
落葉 日照:日なた~半日陰 土
壌:適湿~湿り気味
耐暑性:弱 耐寒性:強 葉の観賞期:春~秋
開花期:初夏 草丈:25~50cm 株張:25cm~40cm

丸い葉をドーム状に茂らせ、雨や朝露が水滴となって
つく様子に風情があります。初夏に黄緑色の小花を
たくさん咲かせ、やさしい雰囲気でまわりの花を引き立
てます。暖地では夏場、半休眠するので、花後に切り戻
して蒸れを防ぎましょう。

 

 


キャットミント
落葉 日照:日なた 土
壌:乾き気味~適湿
耐暑性:強 耐寒性:強 開花期:初夏~夏
草丈:30~40cm 株張:40cm~60cm
香りの良い灰緑色の葉と明るいブルーの花の取り合わせ
が見栄えよく、ハーブとしての人気も高い宿根草です。
日当たりと水はけさえよければ、まず枯れません。
花後に倒れやすい場合は地際から刈り込んでください。
普通、初夏に一度咲くだけですが、寒冷地では初秋まで
繰り返し咲くことがあります。

 

 


アスチルベ
落葉 日照:半日陰 土
壌:適湿~湿り気味
耐暑性:普通 耐寒性:強 開花期:春~初夏
草丈:40~80cm 株張:30cm~40cm

初夏に白やピンク、ローズ色のやわらかな質感の花を
咲かせます。性質は強く、夏の直射日光で葉が焼けて
枯れても、翌春には再び新芽を伸ばして開花します。
空中湿度の高い半日陰でよく育ち、秋まで葉が残れば、
翌年の開花は見事です。株が混み合って元気がなくなって
きたら、秋に株分けしてください。

 

 


ギボウシ
落葉 日照:半日陰~日陰 土
壌:適湿~湿り気味
耐暑性:普通 耐寒性:強 葉の観賞期:春~秋
開花期:初夏~秋 草丈:40~150cm 株張:30cm~60cm
日本を代表する園芸品種のひとつ。極寒地以外、全国
どこでも栽培されています。丈夫で、半日陰の適湿地で
あれば、土質を選ばず、長年放置しても育ちます。
花色は白から淡い紫が大半で、八重咲きや香りのある
品種もあります。

 

 

直線的なラインをもつタイプ

 


サルビア・ネモローサ
落葉 日照:日なた 土
壌:適湿
耐暑性:普通 耐寒性:強 開花期:晩春~初夏
草丈:30~60cm 株張:30cm
株立ちになり、たくさんの花穂をいっせいに伸ばして、
紫、青、桃、白の花を咲かせます。水はけの良い場所を
好み、高温多湿は苦手です。花後は切り取り、風通しを
よくしてください。植え付け時は、株間を30cm程度
あけるとうまくいきます。

 

 


シラン
落葉 日照:半日陰 土
壌:適湿~湿り気味
耐暑性:強 耐寒性:強 開花期:春
草丈:40~60cm 株張:30cm
ランの中ではもっとも丈夫で花つきも良く、花後の葉も
美しいため、グランドカバーとしても使われます。
花色は、ピンクの濃淡や白、淡い水色などがあり、
斑入りの品種もあります。夏に乾燥がひどいと枯れこむ
ことがありますが、マルチングして充分に水やりすれば、
翌年には再生して花を咲かせます。

 

 


ルピナス
半常緑 日照:日なた 土
壌:乾き気味~適湿
耐暑性:弱 耐寒性:強 開花期:晩春~初夏
草丈:50~80cm 株張:50cm
太い花茎を伸ばし、青、桃、白、黄色の花が密集して
咲きます。花壇の主役になる花で、特に花色ごとに群植
すると迫力があります。暑さに弱く、大株になると夏に
枯れやすいため、暖地では一年草のように扱われることも
あるようです。

 

 


ジギタリス
半常緑 日照:日なた~半日陰 土
壌:適湿
耐暑性:弱 耐寒性:強 開花期:晩春~初夏
草丈:80~120cm 株張:50cm
イングリッシュガーデンでは、定番の花です。
ローズピンクから白、アプリコットなどの花色が
あります。暑さに弱いので、花後は早めに切り戻し、
株元の枯葉を取り除くなど、常に風通しをよくする
のがうまく育てるコツです。

 

 

茎の先に目立つ花をつけるタイプ

 


アルメリア
常緑 日照:日なた 土
壌:乾き気味~適湿
耐暑性:普通 耐寒性:強 開花期:春
草丈:20~40cm 株張:20cm~30cm
細い花茎の先に、ボール状のユニークな花をつけます。
日当たりと水はけの良い場所であれば、石垣の上でも
育ちます。花色はピンクの濃淡や白があります。
細葉の矮性種よりも広葉の高性種のほうが比較的育て
安いです。

 

 


ジャーマンアイリス
半常緑 日照:日なた 土
壌:乾き気味
耐暑性:普通 耐寒性:強 開花期:晩春
草丈:50~70cm 株張:40cm
赤、深紅以外のほとんどの花色があり、「虹の花」
とも呼ばれています。草丈も様々で、非常に品種が多い
宿根草です。過湿を嫌いますので、できるだけ水はけの
よい場所に植えてあげてください。株分けしたものを
同じ場所に植えるとうまくいきません。別の場所に
植えてください。

 

 


シャスターデージー
半常緑 日照:日なた~やや半日陰 土
壌:適湿
耐暑性:強 耐寒性:強 開花期:晩春~夏
草丈:60~80cm 株張:30cm~40cm
赤、深紅以外のほとんどの花色があり、「虹の花」
とも呼ばれています。草丈も様々で、非常に品種が多い
宿根草です。過湿を嫌いますので、できるだけ水はけの
よい場所に植えてあげてください。株分けしたものを
同じ場所に植えるとうまくいきません。別の場所に
植えてください。

 

 

 

ゆるやかな曲線をもつタイプ

 


アマドコロ
落葉 日照:半日陰~日陰 土
壌:適湿~湿り気味
耐暑性:強 耐寒性:強 開花期:晩春
葉の観賞期:春~秋 草丈:30~40cm 株張:40cm
アーチを描く茎に丸みのある葉を交互につけ、晩春に
白いベル形の花を咲かせます。写真の白斑入りの品種が
一般的で、群生させると見事です。腐葉土の多い適湿地
を好みますが、乾燥地でなければ土質は選ばないほうです。
暖地では日なたで育てると葉焼けを起こすことがあります。

 

 


ヤブラン
常緑 日照:日なた~日陰 土
壌:適湿~湿り気味
耐暑性:強 耐寒性:強 開花期:晩夏~秋
葉の観賞期:周年 草丈:30~40cm 株張:30~
40cm
リボンのような肉厚な葉と、秋の初めに咲く薄紫色の
花が印象的な宿根草です。クリーム色の縞斑品種が
一般的ですが、写真の濃緑色葉の野生種にも捨てがたい
魅力があります。性質が強くて病害虫もなく、適度な
湿り気さえあれば、日なたから日陰までどんな場所でも
育ちます。美しい姿を保つコツは、新芽が伸びる春先に
古葉を刈り取ってしまうことです。

 

 


フウチソウ
落葉 日照:日なた~半日陰 土
壌:適湿
耐暑性:強 耐寒性:強 葉の観賞期:春~秋
草丈:30~40cm 株張:40~5
0cm
わずかな風にも葉が揺れる、涼しげでナチュラルな
雰囲気が特徴です。秋になるとオレンジ色から褐色へと
色づきます。写真のクリーム色の縞斑が一番人気です。
丈夫で、水はけがよければ、日なたから日陰までよく
育ちます。ただ、黄金葉は夏の直射日光で日焼けする
ことがあるので気をつけてください。

 

 

何か気になるものはありましたか?

 

冒頭でも書きましたが、宿根草は本当に多種多様で、多彩です。
以上はほんの一部ですが、実際植栽してみて成功したものばかり
ですので、植えてみる価値はあると思います。

 

「うちの庭は日陰だから、木は育たないよ」

「いつもじめじめしているから庭は無理」

 

本当に厳しい条件というのはあると思います。
うかつに、「できます!まかせてください!」とは言えません。
でも、お客様の要望がはっきりしていて、そのためのスペースがあるなら、
意外と方法は見つかるものです。

 

もちろん、庭だけが、くつろげろげて癒されるスペースというわけではないので。
建物回りのいろいろな要望に、きちんと応えていきたいと思っています。

 

 

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