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函館の街路樹ベスト7を見てみましょう!

 

函館で見られる街路樹の概要

 

 

函館市のホームページによると、函館の街路樹は高木だけで、26,128本。
高木というのは樹高で3m以上の樹木のことをいいます。
市道に21,701本、道道は2,923本、国道が1,504本という内訳です。

 

中低木は、234,830本。ツツジが全体の86.5%を占めています。
こちらは、市道222,153本、道道8,637本、国道4,040本という内訳。

 

この記事では、街路樹の高木に注目します。

 

植えられている本数で一番多いのは、
ラタナスで4,926本、比率は18.9%。

 

ここから多い順に、

ナナカマド 4,246本 16.3%、

クロマツ 3,441本 13.2%、

ヤチダモ 2,035本 7.8%、

イチョウ 1,770本 6.8%、

ニセアカシヤ 1,625本 6.2%、

トチノキ 1,536本 5.9%

と続きます。

 

プラタナス、ナナカマド、クロマツ、ヤチダモ、イチョウ、ニセアカシヤ、トチノキ。
これが、函館市内で見られる街路樹のベスト7ということになります。

 

ちなみに、全国の道路には高木だけで670万本の街路樹が植えられているそうです。

 

函館市の街路樹が計画的に整備され始めた昭和の初め頃には、
クロマツ、ニセアカシヤ、シダレヤナギが好んで植樹されていたようです。

 

そのあと、ケヤキ、シナノキ、ヤチダモが主流になっていきます。
昭和40年代に入り、都市計画道路が策定されると、ニセアカシヤ、プラタナス、
ヤチダモ等が植栽されるようになります。

 

昭和40年代後半からは、強風に弱いニセアカシヤに代わり、
プラタナスがその比率を高めていきます。ただ、プラタナスは樹木としては強健なのですが、
大きくなりすぎて信号や標識が見えなくなるという難点があります。

 

昭和50年代以降は、ナナカマドが主流になっていきます。
街路樹にも、いろいろな変遷があったんですね。

 

(参考資料 函館市史デジタル版)

 

街路樹ベスト7の特徴

 

ここでは街路樹ベスト7の、それぞれの特徴を見ていきたいと思います。

 

プラタナス

 

 

プラタナスというのは、プラタナス属(スズカケノキ属)の総称です。
いくつか種類があり、一番多く植えられているのがモミジバスズカケノキという
種類です。函館の街路樹もこれです。

 

一番特徴的なのは、その樹皮です。まるで迷彩服のような色に剥げます。
白、緑、灰色のまだら模様ができるので、葉のない冬でも容易に見分けが
つきます。葉は大きく、カエデのような切れ込みが入っています。

 

プラタナスは、明治初年に日本に輸入された外来種です。
街路樹として多くの地域で非常にたくさん植えられてきました。
その理由はなんといっても、その「タフさ」です。
刈り込みに強く、栄養に乏しい土壌に強いうえに、大気汚染にも強い木です。
そして生長も早いんです。それになんとなく洋風のイメージがあるので、
それも好まれたようです。

 

でも現在では急激に本数を減らしています。新規で植えられることは、
ほぼありません。要因は、大きくなると標識や信号を隠すので強い剪定が
必要になるからです。
葉が大型で落ち葉の量が多いので経費がどうしても割高になります。
外来の害虫であるアメリカシロヒトリなどの被害も受けやすく、
防除も必要になります。

 

プラタナスのような生長の早い木は、「コスト削減」のために、敬遠されている
のが現状です。

 

ナナカマド

 

 

ナナカマドは、高さ10mくらいにもなるバラ科の落葉広葉樹です。
北海道から九州までの冷涼な土地に分布していますが、なんといっても
植えられている本数は北海道が一番です。

 

初夏に可憐に咲く花、美しい赤い実、鮮やかな紅葉。寒さにも強いので
道内の各市町村が「自治体の木」に指定しています。

 

生長はゆっくりで、樹高も10mを超えることはまずありません。
葉も大きくないので剪定の頻度は少なくすみ、コストを抑えることが
できます。プラタナスの代替樹木としても定番です。

 

クロマツ

 

 

マツ科であるクロマツは、やせ地、乾燥地に耐えて、萌芽力があります。
潮風に対する抵抗性も大きい樹木です。 古来から日本人にはなじみが深く、
庭木、並木、防風・防潮樹、建築・土木用材、花材として幅広く利用されてきました。

 

海岸の土がほとんどない場所でもたくましく生育していたので、
強い樹種と思われてきましたが、近年大気汚染に弱いことが
判明 しつつあります。
時折発生する大規模な松枯れは、大気汚染とマツクイ虫との複合によるものと
されています。

 

ヤチダモ

 

 

ヤチダモは北海道に多く自生し、植林も盛んに行われてきました。
供給量が多く、わりと扱いやすい樹木でもあるため、街路樹として選定されてきたと
考えられます。本来は、川辺や谷間など湿地を好んで生育します。

 

北海道の代表的な落葉広葉樹であるヤチダモは、自然な状態では、
高さ30m、直径1mにもなります。
枝は太く、大きく広がる壮大な高木で、樹皮は灰褐色で縦に不規則な割れ目がでます。
果実は10月に成熟し、平たい翼をともなって舞い落ちます。

 

野球のバット材として有名なほか、合板、家具、器具など広く用いられています。

 

イチョウ

 

 

イチョウは、全国でもっとも多い街路樹です。
街路樹として全国に植えられているイチョウの本数は、57万本に達しているそうです。
(2007年調べ)
さらに、ここ40年年間にわたり植栽本数で全国首位を続けています。
神奈川県、東京都、大阪府で「都府県の木」に指定されている、人気の樹木です。

 

イチョウは、実は「生きた化石」とも呼ばれていて、その原種は2億年前にすでに
地球に存在していたとのことです。ただ、野生のイチョウはほぼ百万年前に絶滅に
近い状態になり、現在のイチョウは中国でわずかに生き残った種が、人為的に
増やされて世界各地に植えられたものだということです。

 

日本には平安時代から鎌倉時代に中国から持ち込まれ、寺院や神社を中心に
植えられてきました。イチョウの子孫が山野で野生化して増えないのは、
ギンナンを散布する動物が少ないためと見られています。逆にそれは、
人間にとっては勝手に繁殖しない扱いやすい樹木ということになります。

 

イチョウには、オスとメスがあります。ギンナンはメスの木にしかなりません。
樹冠頂部の枝が水平か斜め下に垂れていれば雌株、斜め上に立ち上がっていれば
雄株です。街路樹のイチョウは剪定されていることが多いので区別は難しいと
思います。秋になって雌株にギンナンがたくさんつくことで確認するのが一番
確実です。

 

また、イチョウの葉には優れた薬効があります。
フラボノイドやテルペノイドと呼ばれる成分がそれで、ヨーロッパでは
イチョウ葉エキスとして抽出されたものが医薬品として利用されています。
近年、日本でも健康食品に配合されるようになりました。

 

ただ、イチョウの葉にはギンコキシンやギンコール酸という、人体に有害な
物質も含まれていますので、素人が簡単に口にしていいものではないので
注意してください。

 

ニセアカシア

 

 

ニセアカシアは、北米原産のマメ科ニセアカシア属の樹木です。
5~6月頃に独特の甘い香りをさせながら、房状の白い花を咲かせます。
外来種ですが、北海道東部から九州まで広く分布しています。

 

これには理由があります。
ニセアカシアは、日本全国で荒廃した山々の緑化樹として利用されてきたからです。
その根に窒素固定能力のある根粒菌が共生していて、そこから窒素をもらうことが
できるので、栄養が乏しい土地でも育つことができるんです。
そのうえ、初期生長が非常に早く、寒さ、暑さ、乾燥にも強いため、緑化樹として
大々的に利用された時期がありました。

 

ただ、街路樹としての人気は衰えてしまっています。
何故かというと、成長が早い分、風に弱いんです。根や幹に栄養が十分に回らず、
根が浅く倒れやすいうえに、幹も折れやすいからです。

 

ニセアカシアにはもうひとつ大きな特徴があります。
その花が糖度の高い蜜を多く含み、癖のない上品な仕上がりのハチミツの原料に
なることです。養蜂業者の方々にとっては、非常に重要な蜜源植物なのです。
ハチミツを売っている店頭に行ってみてください。
「アカシヤ蜂蜜」は売れ筋商品として必ず並んでいるはずです。

 

トチノキ

 

 

トチノキは落葉性の高木で、おもに冷涼な気候の地域に分布し、渓谷では
巨木を見ることもあります。街路樹としては東日本が中心で、道内にも多く
植えられています。

 

日本の各地にトチノキの並木があり、「マロニエ通り」と呼ばれています。
函館にもありますが、このマロニエというのはセイヨウトチノキのことです。
セイヨウトチノキは日本のトチノキより葉がひとまわり小さく、実にトゲが
あります。

 

トチノキの葉は大きく、枝先に車輪状につくので濃い緑陰をつくってくれます。
特に夏の暑い地域では、下を歩く人にとって格好の日傘になります。

 

トチノキの花は、小さな白い小花が円錐形に集まって立ち上がる独特な形を
しています。この花もハチミツの重要な蜜源となっています。
高級蜂蜜として扱われています。

 

ピンク色の花をつけるのが、ベニバナトチノキです。五稜郭の行啓通りの
街路樹です。ベニバナトチノキは、マロニエ(欧州原産で白い花)と
アカバナトチノキ(北米原産で濃い赤色の花)の二種を交雑させた園芸品種です。
緑の葉とピンクの花がお互いを引き立たせ、見る人の気持ちを高揚させてくれます。

 

 

この記事では、植えられている本数の多い順に、街路樹を見てみました。
機会があれば他の樹木についても見ていきたいと思います。
見慣れてしまって通り過ぎるだけの街路樹を、ちょっとだけでも「見直す」
きっかけにしていただければ有り難いです。

 

 

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